コンピュータと情報の関係

しばらく前、名古屋のドーム球場から携帯端末を使って写真を送る、というNTTドコモのTVコマーシャルが盛んに流れていました。新幹線の車内からノートパソコンでファックスを送るというシーンもありました。コマーシャルを見た人の視線は、携帯電話よりも、脇役のノートパソコンや携帯端末に集まっていたようです。「あんな風にしたらOLにもてるようになるかも」と考えたビジネスマンも多いことでしょう。

現在、オフィスでは一人1台のパソコンという光景があたりまえのようになりました。営業マンはノートパソコンを抱えて営業活動に出かけていきます。携帯端末を愛用しているビジネスマンも多いようです。仕事先でノートパソコンを取り出し、それに携帯電話をつなげばそこはもう小さなオフィスです。会社のサーバからデータを取り出すこともできるし、新しい情報を電子メールで送信しておくこともできます。相手が電子メールを受け取れない場合は、直接ファックスへ送信することもできます。ISDN対応の公衆電話にノートパソコンを接続してキーボードを打っていても、小銭泥棒と勘違いされる恐れはなくなりました。

社員一人に1台ずつパソコンを設置するのを機会に、社内ネットワークを整備するという会社も増えています。社内ネットワークが整備されると、社員間の連絡や会議などのスケジュールなどが電子メールによって伝達されるようになります。メモや社内文書も直接メールで配布されます。ときには、内緒話のメールが飛び交っていることもあります。「今度の課長、髪の毛がなんか不自然じゃない?」「かつらに決まってるじゃん (^^)」などと、若い人たちは抵抗なくすんなりとネットワークを使いこなしているようです。

その一方で、中高年のビジネスマンたちがこれまで触ったこともないキーボードに向かって悪戦苦闘している姿も見られます。「この歳になってキーボードなんて触りたくなかったよトホホ」とぼやく中間管理職の悲鳴も聞こえてきます。「メールを書くより電話したほうがよっぽど速いのに……」と一本指で入力しながら、ぶつぶつ言っている人もいます。「パソコンが使えるかどうかが出世の分かれ道なんだよ」というひそひそ声は、焼鳥屋の雰囲気に相応しい妙なリアリティをもって聞こえます。

「パソコンを使わない(使えない)奴はビジネスマンじゃない」というような風潮に加え、インターネットブームに加速されて家庭にもパソコンが急速に入り込んでいます。家族にせがまれて購入を決める人。会社の仕事の続きを家でするために購入する人。深夜までの残業と休日出勤があたりまえの超多忙ビジネスマンのなかには、自宅に居ながら電話回線で会社のネットワークに接続してメールをチェックしたり、サーバから資料や書類を取り出せるようにする人もいるようです。そうすれば、定時に会社を出て家族と夕食を共にしながら残った仕事を片付け、休日は家族とリラックスした時間を過ごしながらやりかけの書類を仕上げることもできる……(ちっとも楽になっていない?)

ともかく、仕事でもプライベートでも、コンピュータがあるということがごく日常的な光景になったことは間違いありません。コンピュータは、遅かれ早かれ我々の仕事と生活における情報の生産と消費活動のほぼ100%を担う存在となるようにも思えます。しかし、それが現実のものとなるためには、コンピュータと情報の関係が、冷蔵庫とビールの関係と同じようになっている必要があります。